むしくいブログ

【B14】虎のたましい 人魚の涙 備忘録

 

こんにちは。もじもじです。

私はエッセイや暮らしの本をよく読みます。
個人的な読書感想となってしまいますが、宜しければご覧ください📚

今回の本紹介はこちら⇩

タイトル:虎のたましい 人魚の涙

著者:くどうれいん

講談社

 今回、図書館から借りてきたのはくどうれいんさんのエッセイ集『虎のたましい 人魚の涙』。

 光っているとほしくなる。くどうれいんさんは、化粧品売り場で、銀色の結晶のように輝くコンパクトに手を伸ばす。

今まで、キラキラしたものを「自分には似合わない」と敬遠してきたくどうさんにとって、今までほしくなかった分の光を、これからほしくなりそうな、そんな瞬間だったのではないかと思う。私も同じく、化粧品やアクセサリーには疎い。そんな私が唯一「光って」見えたのは洋服である。

 社会人の頃は時間もお金も余裕があったので、好きなだけ洋服を買った。洋服を求めて、休みの日は一人で渋谷、中目黒、名古屋へ行った。通販では買わずに、実店舗に出向き、お店の人と話して、そこでまた他の服屋さんを紹介してもらったり、今の私からは考えられないくらい、アクティブに行動していた。

当時勤めていた仕事から早く転職し、次は自分の好きなファッションを仕事にしたい、という想いも積極的に動いていた原動力になっていたのかもしれない。

 好きな洋服を身に纏って、おしゃれな一人暮らしをしたい。とにかく私は急いでいたのだと、今振り返って思う。当時の私は「光っている」ものの情報を素早くキャッチできたし、常にアンテナを磨いていた。

 数年後に、結婚をし、子供が生まれてからは私の「洋服熱」は、みるみる萎んでいった。お金はもう自分だけのものではないということや、お金をかけるべき対象が次々生まれてきたことによって、今まで夢を見ていたのか、というくらいに洋服たちが目に入ってこなくなった。

 ヒールのある靴を履かなくなった。コーディネートのポイントになる、ベルトをしなくなった。見栄えよりも着心地重視で、洋服を選ぶようになった。寒くても短いスカートを履いていた私は、今なら、寒ければもこもこの雪だるまファッションを選ぶだろう。

20代前半の頃とは好むファッションも勿論変わってくる。しかし「おしゃれ」ではなくなった自分にどこか納得がいっていない自分もいる。好きな洋服を着て、都会の街を闊歩している時の、心浮き立つような気持ちは今でも忘れられない。洋服は私自身の気持ちを高めてくれる、大切な相棒だった。

 最近は、またふつふつと「洋服熱」やおしゃれをしたい欲が湧き上がることがある。華奢なフープピアスが欲しいな。久々にマスカラをしたいな。今勤めている仕事を辞めたら、ヘアカラーしてみようかな。また「光っている」ものたちがこちらに信号を出し始める。

 繰り返す「毎日」に追われて、自分の気持ちを高めることはなかなか後回しになってしまうけれど、これから少しでも「光っている」ものを拾っていけるように、昔の私が噛み締めていたキラキラした気持ちを忘れないようにしたい。