むしくいブログ
【B16】月と散文 備忘録
こんにちは。もじもじです。
私はエッセイや暮らしの本をよく読みます。
個人的な読書感想となってしまいますが、宜しければご覧ください📚
今回の本紹介はこちら⇩
タイトル:月と散文
著者:又吉直樹
KADOKAWA
今回、図書館から借りてきたのは又吉さんのエッセイ集『月と散文』。
私が思うエッセイの面白いところは、うんうん分かるわかる、と共感できるストーリーがたくさんあり、読んでいてとても気持ちがいいことろだ。
ふふっと笑ってしまうエッセイに出会えた時は私にとって当たりの本である。
今回読んだのは芸人の又吉さんの『月と散文』。
お笑いには全く詳しくないし、又吉さんが『火花』を発表し、芥川賞を受賞した時は、ふ〜んくらいにしか思っていなかった。
今回は、又吉さんがエッセイ本も書いていると今更ながら知り、且つ面白いという口コミを読み、図書館で急いで借りてきて読んでみた。
本作品の中で、私が最も好きなストーリーは「覗き穴から見る配達員」である。コロナ渦により、宅配サービスを頻繁に利用することになった又吉さん。
又吉さんは、配達員がマンションのエレベーターを上がり、部屋の前に来る前から、ずっと覗き穴で玄関の様子を伺ってしまうという。
私も似たようなことをしたことがあるので、「うむ!わかるわかる」と心の中で強く肯く。
マンションに住んでいた時は、時々セールスの営業マンがやってきた。保険や新聞や宗教など種類は様々。私は断るのが下手くそだし、苦手なので、いつも居留守をしていた。
インターホンが鳴り、覗き穴で「これは営業マンだな」と確認し、ドアに張り付いたまま覗き穴で外の様子を覗きながら、営業マンが帰るまで観察。
書いていると自分のしていることが気持ち悪いし恐いのだが、又吉さんと同じく、私もやめたいのになぜか続けてしまっていた。
又吉さんは、色々な配達員の観察を続けているうちに要領の良い配達員、悪い配達員がいることに気づく。要領の悪い配達員には、「なんでやねん」「そっち違うわ」などツッコミが止まらない。
ある日来た配達員も要領の悪い配達員だった。
しかし、とても好感が持てる配達員だったという。商品(食事)の下には持参した紙を敷き、又吉さんの家のドアに向かって「ありがとうございました」と小さな声で言った。(置き配なので玄関前に配達物を置く)
そしてエレベーターに乗って帰るかな思うと、すぐに降りてきて「商品置いときましたよ」の合図なのか、家のドアを小さくノックしたという。又吉さんは、この青年が幸せになりますように、と思った。
この人が幸せになりますように、と思わず思ってしまった経験は私もある。私が現在勤めている図書館には、吹き抜けでガラス張りの読書スペースがある。
図書館は公園の敷地内に建っているために、窓からは緑豊かな公園の木々が見上げるように見ることができる。私のお気に入りの場所でもあり、おすすめは5月から8月頃の夏である。
緑が最も鮮やかな時期で、その綺麗さに思わず立ち止まって見てしまう。
ある日、仕事中にその吹き抜けスペース近くを通った時、ひとりの中年男性の方が「綺麗だなあ!」と大きな声で言い、窓を見上げていた。
こういう時、コミュニケーション力があれば「ここからの景色、綺麗ですよね!」とか言えるのだろうけど、私はそのおじさんの背中に向かって「おじさんが幸せになりますように」と願うことしかできなかった。
お気に入りの窓からの景色を私以外の誰かに綺麗だと思ってもらえて、とてもとても嬉しかった。
『月と散文』は実のところ、まだ読んでいる最中なのだが、読み終わったら今度は『火花』を読んでみようかなと考えている。独特な又吉ワールドの渦にハマってしまったのかもしれない。